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日本語と日本語論 (ちくま学芸文庫)
本, 池上 嘉彦
によって 池上 嘉彦
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内容(「BOOK」データベースより) 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」という『雪国』の冒頭を、ある訳者は“The train came out of the long tunnel into the snow country.”と訳した。英語表現では汽車が焦点となるが、私たちは描かれざる主人公をイメージする。ここで「主客合体」の状況が起きるのだ。本書では、さまざまな日本語話者好みの表現を取りあげ、その背後にある「こころ」の働きに目を向ける。主観性や主語の省略現象、複数表現、「モノ」「トコロ」を軸とした事態把握などから、「日本語らしさ」とは何かが解き明かされる。認知言語学の第一人者が洞察する、日本語の本質。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 池上/嘉彦 1934年京都生まれ。東京大学文学部人文科学研究科(英語英文学専攻)修了。フルブライト留学生として、イエール大学で言語学博士号取得。フンボルト財団研究員としてハンブルク大学、Longman Research Scholarとしてロンドン大学で研究。昭和女子大学大学院文学研究科教授、東京大学名誉教授。ミュンヘン、インディアナ、ロンドン、チュービンゲンの各大学、北京日本学研究センターなどで教授経験(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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「日本語とは~な言語だ」という「日本語論」は素人談義ではよく見かけるものである。しかし、実際のところそれがどの程度本当に日本語の特質を捉えているか、は頓着されないことが多い。本書は、言語類型論からみた日本語の位置づけと返す刀の日本文化論、そして認知言語学的な観点からの日本語の特質までを幅広く論じている。本書の最初の方では、通俗的な日本語論が一瞥されている。「僕はうなぎだ」という「うなぎ文」については、他の言語でも見られるという批判に対して、他言語でも使用は可能だが非常にルーズな言い方であり、実際にはあまり使用はされない、と反批判を加えている。一方、日本語の主語省略を美意識と結びつける考え方については、韓国語も主語省略をしながらそういった倫理観とつなげる発想はないという指摘を紹介しながら批判している。中盤のいくつかの節は、言語類型論の手法上の問題といった、学術的で込み入った話に入っており、素人にはいささか難しい。そのあとの「単数、複数」や「可算、不可算」の捉え方がどこから生じるかについての議論は非常に興味深いのだが、導入で「双数」というあまりなじみのないものを使っているので不必要に難しく見えてしまい、ここはもったいないように思った。第二章は「トコロ」と「モノ」という、筆者の得意とする捉え方の違いが色々と議論されている。「机の上のランプ」というと机に置かれているランプでよいが、「ランプの下の机」というとランプは天井からつるされていて机に接していない気がする、など、言われてみるとなるほどと思う指摘から議論を進めている。「次の駅はどこか」を英語では「what」で聞くことに絡め、英語は場所を立体で捉え、日本語は平面でとらえるという見方もそうかと思わされる。第三章は主語省略の意味を考察している。「聞き手責任(聞き手が話をきちんと復元する義務を負う)」と「話し手責任(話し手が、聞き手が分かるように話す義務を負う)」という見方は面白いと思った。ここから、一人称性、ゼロ主体性(実質的主語省略)などの話が示されていく。全体として、通俗的な日本語論とは違い、なるほどと思わされる視点から日本語の特徴をとらえている。日本語に関心がある人はぜひ読んでみるといいと思う。
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